ルルーシュが居られるのは5日間。
だからなるべく側に居たいし、なるべく沢山関わっていたい。
そう思い、今日は仕事を早く切り上げ、明日は休みを貰った。
ルルーシュに何がしたいか決めて過ごそう。
やり残した事が無いように…
僕は少し浮き足だってしまっているのも自覚しつつ、部屋へと向かう。
愛しい人が待っているのに、浮き足立たない方が変じゃない?
早足で部屋の扉を過ぎると、部屋の中にはいつもと違う暖かな雰囲気が満ちてい
た。
誰かが自分の為に夕飯を作って待っていてくれる幸せ。
それを実感出来る部屋の雰囲気。
僕はなんて幸せなんだろう…
「ただいま」
「おかえり、スザク。今日は早かったんだな」
にこやかに微笑みルルーシュの右手にはお玉が握られており、料理をしていたらしい事が伺える。
「この匂いは…肉じゃがかな?」
「あぁ。肉じゃがに味噌汁、小松菜のおひたしだ。着替えてきたら夕飯にしよう」
洋食も嫌いじゃないけど、和食のが落ち着くのは根本的に日本人だからかな?
着替えを終え、ルルーシュと向い合わせで食卓につく。
落ち着いて二人で向い合わせでご飯を食べて…
君が生きていたならばこの先ずっと、こんな暮らしが出来たのかな?
してみたかったな…
そう思うけど、でもそれは夢のまた夢。
そんな時間は永久に訪れない事も知っている。
「どうかしたか?暗い顔してるぞ?」
「え?そう?」
いつの間にか暗い顔をしていたらしい僕をルルーシュが指摘した。
せっかく一緒に居られるんだから笑わなきゃ…
笑顔で居なきゃ…
そう思いながら頬の肉を上げると、比例するようにルルーシュの顔が曇る。
「無理して笑うな。俺が来たら迷惑だったか?疲れてるのに、また疲れさせる原因にさせてしまったかもとは思ってたんだ…」
済まないことをしてしまった…
伏し目がちになっていくルルーシュに、慌てて僕は謝罪する。
「そんな事思ってないから!ただ君が居なくなるのが分かってるから、それを思うと寂しくなっちゃうだけで…」
こんなに感情をしっかりと表に出すのは何年ぶりだろうか。
ねぇ、ルルーシュ、僕が本音を言える相手は君しか居ないって気付いてる?
僕は包み隠さず話すから、僕も君にそれを期待していたんだ…
でも君は自分の中で考えて、全部自分で背負い込む。
背負い込むだけじゃ飽きたらず、抱え込む事までし始めて…
そんな君は嫌いだった…
「済まない…寂しい思いをさせて…」
ルルーシュ…
幸せで暖かい雰囲気が寂しい雰囲気に急降下して行く。
「ねぇ、もう止めよう?あと数日だけど、楽しく過ごして、思い出作らなきゃ勿体無いよ?
じめじめしてたらそんな思い出が記憶になっちゃうし」
大丈夫なのは今からどれだけ思い出が作れるかだと思う。
せっかくなら僕は楽しい思い出で満たされたい。
此処は僕の『空気読めない』を発揮すべきかな?
「ほら、せっかくの料理が冷めちゃうし、食べよう?」
そして箸を持ち、肉じゃがのジャガイモを口へ放り込んだ。
「あ、美味しいっ」
味が良く染みていて、固すぎもせず、柔らかすぎもせずな煮加減は素晴らしい出来だ。
「ほら、ルルーシュも食べてみなよ。美味しいから。はい、あーんして?」
やっと目線上げたルルーシュは、僕に言われるまま口を開く。
だから僕はルルーシュの口へ1つジャガイモを入れてあげた。
「熱っ…」
「大丈夫?火傷しなかった?」
心配して水を渡すと、熱かったらしく、少し目を潤ませたルルーシュは水を飲み干した。
「馬鹿スザクっ!!」
「ごめんごめん。今度はちゃんとフーフーしてからあーんしてあげるね?」
「そんな恥ずかしい事出来るかっ!自分で食べるからしなくて良い!」
真っ赤になりながらそう怒鳴るルルーシュは、さっきの沈んだ顔より生き生きしている。
沈んだ表情も美人だけど、生き生きした顔のが大好きだから、これで良かったんじゃないかな?
夕飯を食べ終わる頃に伝えようかな、明日休みを貰った事と、明日は君がしたい事を、望む事をして過ごしたいって事を…
僕は君と過ごせるだけでとっても幸せなんだって事も…
=続く=
**あとがき**
新婚生活はまだまだ続きそうです(笑)
お付き合いしていただけると嬉しいです(^^)
08.11.14